香水をより深く理解する:成分の違い
マリージャンヌのアリスです。
香水は、自然と科学が織りなす調和の芸術です。マリージャンヌでは、美しく意味のある香りを生み出すために、天然原料はもちろん、天然由来や合成原料も含めて、すべての素材を厳選しています。
現代の香水を正しく理解するには、「天然原料」「天然由来成分」「合成原料」という、香水づくりの3つの柱を知ることが不可欠です。
まず基本から:「香水とは何か?」
香水とは、様々な物質が織りなす繊細な調和です。香水の構成は主に以下から成ります:
・原料(香りの濃縮成分)
・溶媒(香りを希釈・安定化させる液体、通常はエタノール)
・定着剤(香りの持続性を高める分子、ベースノートに存在)
本記事では原料に焦点を当てます。現代香水において重要なこれらの原料は3つのカテゴリー(天然、天然由来、合成)に分かれ、それぞれが重要な役割を果たしています。
各原料の違いを理解する
天然原料:香水の魂
天然原料とは、花弁や根、樹脂といった植物由来のもの、あるいは蜜蝋などの動物由来成分を、水蒸気蒸留、低温圧搾、アンフルラージュといった物理的な手法によって抽出した香料です。たとえばローズアブソリュートは、化学処理を一切施さず、何千枚ものバラの花びらのエッセンスをそのまま閉じ込めた、まさに自然の結晶ともいえる存在です。
香水業界では、現在1,000種以上の天然原料が知られており、毎年新たな素材が発見されています。
しかしながら、天然原料にはいくつかの限界も存在します。
ウードのように極めて希少な素材、スズランのように繊細すぎて抽出できない花、あるいは動物性ムスクのように倫理的な課題を伴う成分もあります。持続可能な香料づくりを考えると、天然素材のみでは成立しない場面もあるのです。
実際、最も高価で贅沢とされる香水であっても、100%天然である必要はありませんし、実際に存在することもほとんどありません。
大切なのは、素材の個性を見極めながら、それぞれが最も美しく響き合うよう、丁寧に調和させることです。
天然由来成分:自然と科学の架け橋
松ヤニや柑橘の皮などの天然原料を出発点としつつ、抽出や化学処理を通じて制御された変容を遂げた成分。抽出プロセスで元の化学構造が変化するため、たとえ自然由来でも「純粋な天然」とは分類されません。
具体的な技法:
・溶剤抽出(例:花からのアブソリュート)
・水蒸気蒸留(例:精油)
・精製や発酵(例:特定の香料化学品)
マリージャンヌの調合で頻繁に使用されるシトロネロールを例に挙げましょう。この分子はローズオイルやゼラニウム、シトロネラグラスに天然に存在しますが、花から直接採取するのは非現実的。(数滴のためにバラ畑全体が必要!)そのため、倫理的なシトロネロールを得るために、調香師はレモングラスやシトロネラ油に水素分子を慎重に添加(水素化処理)します。結果として得られるのは、自然のものと同一ながら、より清潔なローズ調の香気分子です。
「天然由来成分」として認められるには、少なくとも50%以上が天然原料に由来していることが条件とされており、植物や動物由来の素材との明確なつながりが保証されています。
これらの成分は、天然原料に「劣る」ものでは決してありません。むしろ、安定性が高く、倫理的で、用途の幅も広いという特性から、香水において重要な役割を果たしています。
バニリン:天然由来の革新
天然由来成分の代表例のひとつがバニリンです。
この分子は本来、バニラビーンズに自然に含まれている香気成分ですが、現在市場に流通しているバニリンの多くは、リグニン(植物の構造をつくるポリマー)や発酵させた米ぬかなどから得られています。
分子構造としては天然のバニリンとまったく同一でありながら、はるかに持続可能で安定した選択肢として、香水業界では広く採用されています。
マリージャンヌにとって、こうした選択は単なる代替ではなく、品質と倫理を両立させた“妥協なきイノベーション”のあらわれです。
合成原料の革新:香りの可能性を広げる力
合成分子は香水業界の影の革命児です。ラベンダーの鎮静作用をもたらすリナロールやトンカビーンズの干し草のような温もりであるクマリンのように自然を再現するものもあれば——スズランやガーデニアのような「無香の花」に声を与えるものもあります。あるいはカロンの海のそよ風、ゲオスミンの雨上がりの香り、ガンマウンデカラクトンの桃の柔らかな肌触りといった、全く新しい嗅覚体験を創造するものもあります。
もしこれらの合成香料の発明がなければ、私たちは今日知られている香りのファミリーそのものを表現することができなかったでしょう。
19世紀以降、調香師たちはおよそ3,000種類もの新しい香気分子を合成によって手に入れ、香りの世界にかつてない広がりをもたらしてきました。
歴史的に、合成原料は香水の民主化に貢献しました。シャネルNo.5(1921年)のアルデヒドは抽象的な花束を可能にし、合成ムスクはジャコウジカの採取から救いました。
現代では、雨の香り(ゲオスミン)や太陽に温められた桃(ガンマウンデカラクトン)を、果樹園全体を収穫することなく再現するという実用的な課題を解決しています。
一部の批評家は、合成原料には「魂」が欠けていると主張します。
しかしそれは、合成香料が果たしている自然の美を高め、広げる役割を見落とした見解です。
たとえばジャスミンの香りには、天然にも存在する化合物「インドール」を合成で加えることで、その酩酊感を伴う深みが一層際立ちます。こうした香料があるからこそ、私たちは官能性と洗練が共存する名香を楽しむことができるのです。
合成原料は、天然原料の「代用品」ではありません。むしろ、香りに深みと持続性、そして新たな創造性をもたらす、現代香水に欠かせない存在です。

なぜ天然由来成分は天然原料と同じ価値があるのか
天然と天然由来成分の区別は品質の差を反映するものではありません。多くの天然由来成分は:
・香りのプロファイルの一貫性が高い
・持続可能性に優れる(希少植物の過剰採取を抑制)
・性能が向上(持続性と拡散性の向上)
といった利点を提供します。
マリージャンヌでは、高品質で倫理的な香水を創るため、原料を慎重に選択しています。
天然、天然由来、合成原料に関する議論は、優劣ではなく目的、創造性、持続可能性に関するものです。あらゆる種類の原料が香水芸術において役割を持ち、その真髄は調和のとれたブレンドにあります。
重要なのはブレンドの背後にある芸術性です。天然由来のサンダルウッドは野生の木よりも生態系に優しい選択肢かもしれません。合成のスミレの葉は農地を節約するかもしれません。
マリージャンヌでは、美しさと誠実さのために原料を選びます。
自然の贈り物を讃えつつ、現代のイノベーションを活用することで、本物で倫理的、そして忘れがたい香水を創造するため、あらゆる世界の最良を受け入れています。結局、真に重要なのは分子の起源ではなく、それが呼び起こす感情なのです。
今回も最後までお読みいただきありがとうございます。
マリージャンヌ 担当:アリス
翻訳協力:松永
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